この度、河合義和さんが、伊吹嶺自註シリーズAとして句集『河合義和集』を上梓されました。
河合さんは、平成16年3月に朝日カルチャーセンター俳句教室に入会し、栗田やすし先生に出会われました。そして、7月に「伊吹嶺」に入会し、栗田やすし・栗田せつ子両先生に師事されました。以後14年の作句活動の中、「伊吹嶺」に掲載された俳句のうち200句を自選し、ここに句集としてまとめられました。
この句集の第一の特色は、何と言っても吟行句が多いことです。句集の4分の3ほどが吟行句です。
第二の特色はその俳句の姿です。上五あるいは中七で切って、下五を名詞あるいは用言の終止形で止める句がとても多いのです。一句一章の句でも、下五をしっかりと止めています。俳句の基本に忠実で、姿かたちのよい写生句が並びます。
以下に紹介せていただきます。
両眼の抜けし干し蛸秋の風 日間賀島
茶葉摘めり指に包帯うすく巻き 西尾
春の陽を集めて白し葦の束 琵琶湖
鵜篝の薪香りくる宿の朝 長良川
捨て窯の角煙突や片時雨 常滑
まず撫でて干し紙はがす春日向 美濃
背中越し糶札飛べり金魚市 弥富
かじかみし手で裂きくるる儺追布 国府宮
酢の蔵の黒板塀や石榴熟る 半田
鳴らしみる明治のオルガン木の芽晴 明治村
河合さんの吟行句は、その土地ならではの物を見つけ、句に詠みこんでいます。ですから、読めばそれとなく訪れた土地が推測されます。これは、その土地への挨拶句といってよいと思います。そして、どの句も感動を確かな物に定着させた写生句となっています。
高遠の囲み屋敷や花の雨
噴煙の浅間うつすら雪化粧
うららかや杵振り踊る恵那の里
大和路や旅の終りに蓬餅
どの墓も尺余の雪や高野山
これらの句のように、地名などの固有名詞が出てくることは稀です。地名は、季語と同じように動いてはいけないとよく言われます。しかし、どの地名も存在感があり、動くことはありません。
半袖の腕の細さや今朝の秋
白き手のしなやかに伸ぶ風の盆
海女小屋の消壺熱し夏の昼
鉾曲がる辻に敷きたる竹の艶
裏庭に栗落つる音母見舞ふ
抱きし子の髪やはらかし青田風
歳月を経て、しみじみと心に響く生活詠です。
まさしく風の盆。哀愁ただよう胡弓の音が聞こえます。
夏でも暖を取る海女の仕事の厳しさが伝わります。
勇壮な鉾の引き回しで、ばりばりと竹の割れる音がします。
口にはしない家族への思いが伝わってきます。
言外に伝わる思い、句から連想される景。これは、無駄な言葉が一切ない俳句がもつ一つの力だと思います。(新井酔雪)
平成30年9月
発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
小B6判 100頁
頒価1000円 |
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河合義和さん近影
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【申込み方法】
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〒492-8155
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河合義和
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